パンと日用品の店 わざわざ

座談会#6 取引先メーカーとの商品説明会

2022.02.12

前回の記事はこちら
座談会#1 「全ては誰かの幸せのために」コミュニケーションをとる
座談会#2 お客様とわざわざとの出会いのはなし
座談会#3 お客様の声から改善に結びつける
座談会#4 これからのわざわざに期待すること
座談会#5 卸先店舗との相談会

わざわざでは商品を販売する上で、単に商品情報を紹介するだけでなく、その生産背景や歴史などを知って知識をつけ、より細やかな説明や体験をお客様にお届けしたいと考えています。メーカーや生産者さんと良好な関係性を築き、きちんと作られたものであることを理解し、お客様へ伝えることを大切にしています。

その「きちんと作られたもの」であるということは、私たちが独自に定める商品選定基準のひとつです。そのためにわざわざでは、取引先であるメーカー・生産者さんにご協力頂き、スタッフが直接お話を伺い、知識を深め商品をよりよく理解する機会を設けています。

この座談会 #6の記事では、取引先メーカーさんの、ドイツのシューケア用品メーカー「TAPIR」の製品を国内に卸しているTAPIR JAPANさんにご協力いただき、TAPIR創業の歴史から製品の特徴、製品を使っての靴磨きの方法まで幅広くお話を伺った様子をお届けします。

TAPIR(タピール)とは

革製品のケア用品メーカー・TAPIR(タピール)。みつろうなどの天然素材だけを原料にした製品を作り続けている会社です。

石油系オイルや有機溶剤などを含んだ一般的なワックスと比べて人体や環境への負荷が少なく、それに香りもよいので、革のお手入れをより負担なく日々楽しくこなすことができるでしょう。単に天然素材というだけでなく「可能な限り、有機栽培の植物を原料に用いる」といった取り組みもタピールのこだわりのひとつです。

わざわざでは、スタッフにタピール愛用者がいたことをきっかけに取り扱いを始めました。革靴を履くスタッフも多いのですが、革靴を長く愛用するために、あわせてオススメしている定番のケア用品です。

TAPIRのはじまり

タピールは1983年にドイツの小さな村で誕生した会社です。当時はドイツで環境問題が大きく取り上げられ始めた頃。タピール創業者のボードー氏も、そんな環境問題に対して取り組む学生のひとりだったといいます。

この頃、巷で売られているワックス製品のほとんどは、新素材のワックスや石油系のオイル・有機溶剤・タール色素などを含み、石油化学系の乳化剤や酸化防止剤などが含まれていました。

このような状況から「革をケアしようとしたら良いワックスがなかった」と悩んだ創業者は、現代のワックスが誕生する以前にあった昔ながらのワックスの作り方・油脂の扱い方を研究し、再現。今ある便利な道具の起源はどのようなものだったか。道具の“そもそも”を追求していったことで、天然素材のみで作るタピールの製品を誕生させました。

必要な素材しか使わない
製品づくりへの考え方

「天然素材は自然から得られるもの。自然が素材を生み出すためには環境が必要」という考えから、現在も創業者は、環境意識の高いライフスタイルを心がけているとお聞きしました。

こうした創業者の考えを反映したタピールの製品は「NCP(NATURE CARE PRODUCTS)」の認証を取得。製品の使用に加えて、その製造過程でも環境への影響を及ぼさないことを認めるドイツの認証制度です。

また製品の開発製造にあたって動物実験の実施・委託をしないこと。ドイツ自然保護連盟の活動を積極的に行っていること。南アメリカに生息するバクの保護基金を支援していることを表明しています。

“「本当に必要なものは何か」製品の目的のために必要な素材しか使いません。また素材の特性を生かす方法で製品化しています。”(TAPIR JAPANのサイトより)

靴磨きの方法もお聞きしました

専門の職人がいたり道具が必要であったりと難しそうなイメージもある靴磨きですが、革のケアは実はとてもシンプルだとお聞きしました。「1にワックスで皮膜保護。2にブラッシング(または布で拭く)」。基本はこれだけで良いそうです。

また、タピールにはクリームやワックスなど豊富なラインナップがありますが、必ずしもそれら全てを揃える必要はないと仰っていました。基本のお手入れなら「フレーゲクリーム」と「艶出しブラシ」。まずはこのふたつから組み合わせてみるのをおすすめします。

革製品を手に入れたらまず、ワックスで油分をしみこませておく。それで充分に皮膜が保護されていれば、しばらくはブラッシングだけで日々のお手入れは済んでしまいます。

フレーゲクリーム。含まれたワックスの成分で革を保護しながら、防水・艶出し効果も。よく使う靴にあわせて色を選びましょう。柑橘系の香りがあります。
馬毛の艶出しブラシ。毛の固さが革全般のケアに使えるオールマイティなブラシです。

革製品によっては“タンニンなめし”など時間をかけてなめされた革で作られているものがあります。このようにタンニンがすでに染み込んでいる革の場合、最初の1,2年はブラッシングだけで充分にケアすることができます。

さらに使い分けるなら

革に栄養を与えてくれるレーダーバルサム。革靴だけでなく革小物などオールマイティに使いたい場合におすすめ。無色タイプですので革の色を問わず使えます。バルサムを塗り込んだあと、少しだけ水分を含ませた布で磨くことでツヤが出ます。
レーダーフレーゲ。ホホバオイル入りで、まるで肌に浸透するように革に油分が染み込んでいきます。デリケートな革(山羊・羊・子牛の革)や、履く機会の少なく乾燥しがちな靴を保湿する目的にもおすすめ。
このほか、汚れ落とし用ブラシや仕上げ用コットンネルなども取り扱っています。

わざわざオンラインストアでは、TAPIRの製品を取り扱っています。商品一覧はこちらをご覧ください。

社内全体MTGでも、取引先のお話を伺っています

わざわざでは全スタッフ参加の会議(全体MTG)を毎週行っており、お店/事務所/スタジオ/リモートとスタッフのいる場所を問わずビデオ会議ツールで参加しています。アイテムの取り扱い基準の話から最近会った人、読んだ本の話まで、幅広く皆の知識にしていこうという取り組みで、仕事への理解を深める一因になればという思いで続けています。

不定期ではありますが、この社内全体MTGに取引先様をお招きすることで、全スタッフが取引先より直接お話を伺える場を設けています。そこで伺ったお話はわざわざオンラインストアや弊社noteにて、商品/メーカー紹介記事として公開しています。

うなぎの寝床は約10年来のお付き合いとなる会社ですが、2021年春に改めて会社全体の取り組みをお尋ねしました。(記事はこちら
2021年5月には、「きえーる」で知られる環境大善にお話を伺いました(記事はこちら

今後もわざわざではメーカー・生産者など取引先の声に耳を傾け、その背景もお客様へ伝えながら販売をしてまいります。

文責>鈴木誠史 写真>若菜紘之