パンと日用品の店 わざわざ

座談会#4 これからのわざわざに期待すること

2021.11.30

座談会#4

オンラインストア常連のお客様との座談会の最終編です。ここまで、お客様とわざわざとの出会いのきっかけからどのような関係性になっていったのかという良いお話や、わざわざオンラインストアへの不満についての意見交換をしました。最後はフリートークでお客様がこの機会に代表平田に聞きたいこと・言いたいことをぶつけていただきました。

前回の記事はこちら:

座談会#2 お客様とわざわざの出会いのきっかけ

座談会#3 お客様の声から改善に結びつける

オンライン座談会にご参加いただいたお客様(文中敬称略)

・コウさん:大阪府在住・わざわざ利用歴4~5年、オンラインのみ店舗利用なし

・なぎささん:長野県在住・わざわざ利用歴5年以上、オンライン・店舗とも利用あり

・ひろみさん:埼玉県在住・わざわざ利用歴2~3年、オンラインのみ店舗利用なし

・マツザキさん:埼玉県在住・わざわざ利用歴5年以上、オンラインのみ店舗利用なし

わざわざの希少価値について

わざわざの名前の由来は、長野県東御市の公共交通機関も通っていない山の上にあるお店なので、「わざわざ来てくださってありがとうございます。」という気持ちをこめています。そんなわざわざだからこそ、お客様が考える希少価値にどのように応えるのか、意見交換しました。

(マツザキ)さきほど再入荷通知のタイミングでお話がありましたが、私は今のわざわざがコンビニみたいにいつでも在庫ありますよということを目指していないように感じるから、やっぱり好きなところがあります。食品・衣類にしても、それらに生きものみたいな感覚をもっているので、大切に作られたり、使われたりするものだから、いつもたくさん作れないということが大前提にあるので、在庫がないのがデフォルトなのかなって。

私たちは便利で、いつでも在庫があって、しかもそれが安いというのが当たり前になっている状況のなかで、そうではない、不便だけどわざわざで買いたいという気持ちにさせられる、不便なのがわざわざなんだよと思っています。

わざわざの行動指針:信頼される人間であれ

(平田)なるほど。それにお答えするとすれば、わざわざはもちろん、コンビニにはなり得ないんですが、もっとたくさんの方に知ってもらいたいという気持ちはあります。わたしはオリジナル商品を作るために様々な産地や工場を訪ねています。そこで印象的なことがありました。40年前ぐらいの大量生産・大量消費社会で、当時多くの工場が設備投資をして、生産機能を拡大しました。そのあと、さらに安く、大量に生産するために、生産機能を中国に移転した工場が多くありました。

ある工場の方とお話したときに、中国に進出したことをものすごく後悔されている方がいました。中国で生産するので、同時に技術も中国に落として、日本で職人が育たなくなって、中国産の安さに負けて日本でものが売れなくなったということが起こってしまっているんですね。だから私が訪問した工場では、大きな工場の中で小さな生産をしていて、機械が全然稼働していない工場があります。彼らとしては、できれば昔のように工場を動かして生産したいという気持ちがあるのですが、人はおらず技術が継承されないという状況になってしまっています。

わざわざオリジナル商品の残糸を使った「ザンシンバッグ

そこでわたしたちがオリジナル商品を企画して、工場に生産を依頼し、協働で作っていって、工場を稼働させて、その産地の雇用も増えて、若い人が就職したり、そういう現象が起きると思っています。だから本当はもっと伸ばしたいんです。

だから在庫がないというのはやっぱりよくなくて、希少価値はなくなるかもしれないのですが、その希少価値は産地に現れて、それをみなさんが支えているという構造にしていきたいと思っているので、すみません、マツザキさんのご要望には沿えないかもしれないのですが。

(マツザキ)いいえ、今のお話ですごく伝わりました。今特にコロナもあって、全体的にみなさん購買できる方が少なくなっていて、私の好きなサッカー観戦もそうなんですが、サッカー場が満員になることはないんですよね。理由の一つとしてはコロナに感染したくないというのがあると思いますが、やはり経済的な理由もあると思います。

わざわざの行動指針:視点は広く高く多く

そういう状況でも何か残していかないといけない、何かを変えていきたいという想いはすごく共感します。もちろん、在庫があるというのはわたしはうれしいんですよ。今はコロナの状況が落ち着いてきて、いろんなことが変わっている中で、わざわざからのメッセージを期待します。

(平田)ちょうど先日、さきほど言ったものづくりのことでツイートしたら、ちょっとバズりました。だからやはりそういう話は共感値がすごく高くて、時代背景としては本当にその方向に向いているということを感じています。ありがとうございます。

(コウ)さきほどのお話を聞いていて、私は結婚したばかりの時はお金もないし、節約のことばかり考えて日常生活を送っていたことを思い出しました。でもいつもわざわざから送られてくる、長野の景色の写真が美しいなぁと感じたり、さきほどの工場の方のお話とか、靴下ができる仕組みとか、残糸が発生してしまう仕組みがあって、それが価格に反映されることもあるといった、ストーリーを教えてもらえて、共感して応援したくなります。

また自分自身も使い捨てではなくて、ものを大切にして、日本を大切にして、子どもたちに美しい日本を残していきたいっていう想いがあります。そういうことを平田さんから教えられて、自分自身の買い物の意識が変わってきたので、これからもぜひやっていってほしいと思います。

長野県東御市の風景

わざわざが仲介する寄付のサービスを使ってみたい

わざわざのオリジナル商品「残糸ソックス」は靴下メーカーのタイコーさんが製造過程で出る残糸を原料として開発した商品で、「残糸ソックス」が売れれば、結果的に廃棄されるものを再利用でき、環境負荷の削減につながっています。このように、ものを通じて社会貢献する取り組みを実践していますが、お客様からものを通してではなく、わざわざを介して寄付をしたいという要望をいただきました。

(ナギサ)平田さんのものに対する考えは共感できるし、わざわざで買うことで、わざわざの様々な取り組みに協力していることになるとは思うのですが、正直ちょっとものはもういっぱいで、ものは要らないんですよね。例えば平田さんが訪問した所に困った人がいて、わざわざがこういう事業をやれば助かるといった経緯があって、それに対する寄付をするようなことがあるとうれしいです。さらにそれに対する経過報告を共有できて、自分が何かに貢献している、ボランティアをしているということを実感できるようなことを仲介してもらいたい。

取引先の一つ、ねば塾

(平田)それはすごくいいですね。今私たちが付き合っているステークホルダーの中に、ねば塾という、スタッフの7割が精神障害の方々で成り立っている会社があって、そういうところで作られている良い商品を取り扱って、ものを通して還元するということはやっていたのですが、直接寄付するというのは考えていなかったので、検討してもいいなと思います。

先日社内で、問touがある芸術むら公園の緑化ボランティアを実施しました。わざわざの利益の中から、花や種を購入して、公園内に植えました。あるお客様から、お金を払って参加したいと言ってくれる方がいて、お客様と一緒にボランティア活動をするのもいいなと思いました。

緑化ボランティアを実施した問touのある芸術むら公園

(ナギサ)こちらが良かれと思ってやるボランティアや寄付も、本当にその人が必要かどうかは別なので、せっかくやるからには迷惑になりたくないし、寄付の先のお金の使われ方がわざわざできちんとリサーチされていて、経過を共有されるようなサービスがあれば、寄付したいと思います。

(平田)そうですね。最後の最後まで何につかわれているかというところを私たちが管理できるというのが大切ですね。人や仕組みをきちんとつくらないといけないと思いますし、実現まですごくむずかしそうですが、やってみたいと思ったので、いろんな人に相談して実現できるようにしたいと思います。面白い意見でした、ありがとうございます。

後日談>寄付についてのしくみをわざわざで構築できないかと、現在、リサーチと周辺企業へのヒアリングを行い、しくみを考えている最中です。そんなに遠くないうちに実現できる可能性が見えてきました。すばらしいアイディアをありがとうございました。

よき生活者になることを伝えたい

わざわざのスローガン:よき生活者になる

わざわざは「よき生活者になる」ことをスローガンとしています。それは人の尺度で自分を測らないという物差しを持って、一つずつ自分の生活を作っていくことですが、それを実践していることを公言したり、周りの人に共有することに、難しさを感じているお客様もいました。

(ヒロミ)常日頃感じていることなんですが、私がわざわざで買い物をすることを身の回りの人に言いづらいんです。土地柄なのか、高い意識を持っている人はある程度余裕のある人じゃないとそういうお金の使い方はできないという感覚が周りの人にあるような気がしています。本当は自分がお金をどう使おうが勝手なのですが、共感してもらえたり、伝えたいとは思っているのですが、そういったことをみんなに共有するのは難しいなと感じています。

パンと日用品の店 わざわざで日用品を販売

(平田)これは本当に難しいんです。私は2009年にお店を始めて、オープン当初から数年は、環境問題に意識が高い人や、極度に食品に気を配っている人とか、そういったユーザーが多かったのですが、だんだん変わってきて、今はパンがおいしいという理由だけで買いに来てくれる近隣のお客様とか、さまざまなユーザーがいます。先ほどの話にあったように、ものがあふれているということで買い方も変わってきていて、全体的に13年ぐらいで相当変わったと思います。

パンと日用品の店 わざわざで販売しているオリジナル商品

現在アメリカの企業認証のBcorpの取得に取り組んでいます。この認証は世界中で取得をしている会社が4000社以上あるのに対して、日本はまだ7社しかありません。アメリカでは、環境意識や人権意識が高い人が多くなってきていますが、それに比べたらまだ日本の中で意識は高くないないかもしれない。アメリカと日本の社会の時間軸のずれがだいたい10~15年ぐらいあると言われています。今はわざわざで買うことが声高に言えなかったとしても、それを継続して、5年・10年環境が変わっていったら、そんなに前から使っていたの、すごいねと言われたり、教えてくれればよかったのにとかって、もしかしたら言われるのではないかなと思います。

座談会#5に続く

監修>平田はる香 文責>おざき 写真>若菜紘之