前回の記事はこちら
座談会#1 「全ては誰かの幸せのために」コミュニケーションをとる
座談会#2 お客様とわざわざとの出会いのはなし
座談会#3 お客様の声から改善に結びつける
座談会#4 これからのわざわざに期待すること
わざわざではパンを実店舗で手作りしているほか、各メーカーさんとの協業によりオリジナル製品の製造販売もしています。
わざわざオリジナル製品は、実店舗やオンラインストアで直接お客様に販売しているほか、小売店への卸販売も行っています。そのため、わざわざオリジナル製品はわざわざだけでの限定販売というわけではなく、卸先である各店舗様でもご購入いただけるようになっています。
現在、おかげさまで39店舗の皆様に卸先としてご登録いただいております。実はわざわざから営業をかけたことはなく、何らかの形でわざわざを知った方が卸販売の情報にたどりつき、声をかけてくださったことからお取引へとつながってきました。
こうしてありがたいご縁をいただきながらも、各店舗様とのコミュニケーションをほとんど取れずにおり、一抹のもどかしさを感じておりました。そこで今回、卸先店舗の皆様を対象に「オンラインストア卸相談会」を開催する運びとなったわけです。
初回の卸相談会には、両筑プランツショップさんがご参加くださいました。わざわざと出会ったきっかけはうなぎの寝床さんでの展示。残糸ソックスが置いてあったことから興味を持ったとのことで、現在はわざわざザンシンバッグと共にお取り扱いいただいています。
<両筑プランツショップ>
福岡県朝倉市にて、面白くて珍しい植物を育てる「両筑(りょうちく)植物センター」のスタッフが営むお店です。実店舗とオンラインストアがあり、自分たちが心をこめて育てた植物をはじめ、実際に使ってよかった肥料や道具など、日々の生活が楽しくなるものたちを販売しています。
https://ryochiku-plants.shop/
両筑プランツショップ(以下両筑さん)は園芸用品店という特性もあり、取り扱う商品を決める際には「作業性の高さ」がひとつのポイントになるそう。わざわざもパンを焼くハードワーカーという共通点から話が弾み、卸相談会の1時間はあっという間でした。様々なお話をさせていただきましたので、ここでいくつかご紹介いたします。
園芸のハードワークに耐えたので
仕入を決めた、残糸ソックス
両筑さんは植物をたくさん育てているので、日々の水やりや植え替え作業など、全身を使うお仕事をされています。その中でずっと気になっていたのが「靴下」でした。
ファストファッションブランドなどでお手軽に買える、一見しっかりしてそうな靴下たちは、連日歩き回って足を酷使する両筑さんにかかると数ヶ月で履きつぶしてしまいます。頻繁に買い替えることとなり、使い捨ててしまっている感覚で嫌だなと感じていました。
そこでひょんなことから出会った、わざわざの残糸ソックス。試してみたところ半年~1年弱ほど持ったそうです。これなら履き続けたいし、お客様にも紹介したい!と思い、そこから残糸ソックスを仕入販売するに至ったとのことでした。
残糸ソックスを販売し始めた頃は、植物や園芸グッズの中に突然靴下があるのでなかなか売れなかったそう。ただ、両筑さんは履き心地と丈夫さを身をもって体感しています。残糸ソックスのいいところをしっかり理解していたので、地道に紹介し続け、だんだんと売れるようになりました。現在では女性のお客様からの支持が多いようで、S・Mサイズがよく動いています。
平織とパイル編みのミックス、実際どう?
両筑さんが残糸ソックスと出会ったのは、実のところ残糸ソックスの販売を始めた初期の頃にあたります。そのため両筑さんは、残糸を杢糸(※)にして靴下にしていた頃や、ド派手な配色の頃の残糸ソックスもご存知でした。
※杢糸(もくいと):色違いや素材違いの糸を混紡した糸のこと。同一の糸で撚られたものは単色で編み上がるところ、杢糸だとミックス感のある風合いに仕上がる。
残糸ソックスの改良の歴史を、ユーザーとしてリアルタイムに体感されていたであろう両筑さん。そこで現在の残糸ソックスが「平織」と「パイル編み」を2足セットで販売している点について、使い勝手等について伺ってみました。
厚手のタイプも結構好き、とのことでまずはひと安心。夏場に履いても空調がきいていることもあり暑さをそこまで感じずに過ごせたそうです。
植物のお世話をするチームにも履いてもらっていて、作業時に履いている長靴の中でずれない点が好評とのことでした。一方で、かかとの部分が伸びてしまうのが平織バージョンよりも早いように感じているとも教えてくださいました。
パイル編みは糸がループ状になっている都合から、平織よりも糸の量が倍ほどに増えています。その点が何らかの影響をもたらしていることが考えられます。両筑さんがハードに履きこんでくださっているからこそ見つかった課題です。ここはタイコーさんと共に今後の生産時の宿題となりました。
商品改良の取り組みについては、こちらの記事もぜひご覧ください。
読み物「改良に改良を重ねる」 ※わざわざオンラインストアに遷移します
わざわざザンシンバッグ
推しはMサイズ、実際売れるのは…
両筑さんはわざわざザンシンバッグも取り扱ってくださっています。ご自身も何枚か購入し、個人的にはMサイズがお気に入りだそう。お買い物のエコバッグにちょうどいいサイズ感で、牛乳パックが入って重くなっても平気なところが重宝している理由といいます。
両筑さんとしてのイチ押しはMサイズ。しかし実際によく売れているのはSSサイズとのことでした。
SSサイズがよく売れている傾向は、両筑さんのお店だけではなくわざわざオンラインストアにもみられます。ちょっとコンビニへお買い物に行く程度のミニサイズで試しやすいこと、全4サイズの中で一番お手頃価格なことが理由なのかもしれません。
両筑さんはオンラインストアで、わざわざザンシンバッグの使い勝手について丁寧に記載してくださっています。お届けするカラーはランダムでお任せになる旨もわかりやすく掲載されているため、色のイメージ違いでの返品も防げているとのお話でした。
あの配色パターン、また欲しい
さて、わざわざザンシンバッグは初期の頃にほとんど単色のタイプを製造していました。表面はほぼ1色で、取っ手部分の裏面だけが違う色になっている仕様です(以下単色タイプと呼びます)。両筑さんからこのパターンがまた出てこないかというご質問をいただきました。
ご要望があるなら、ぜひやろう!といいたい所ではありますが、現行品に単色タイプが出てきていないのには生産背景に理由がありました。
単色タイプを作っていた頃は4つの糸巻きを用意し、製造用の編み機に糸を4本かけていました。2本目までがバッグの身頃の部分となり、3本目と4本目が取っ手の裏部分として編みあがるような仕組みです。3・4本目の糸の色を1・2本目の色と変えることによって、単色タイプを生み出せていました。
わざわざザンシンバッグは先にご紹介した残糸ソックスと同様に、原材料として靴下工場に眠っていた「残糸」を利用しています(※)。余り糸という特性上、きれいにまとまった糸の量を確保できるわけではありません。
1枚目の写真の左が新品の糸で、右が使った後の糸です。これくらいの巻きになると糸を繋ぐ作業に手間もかかり残糸として余る運命になります。溜まると廃棄されたりします。2枚目の写真はこういう小さな巻のロッドを番号をつけて、ひたすら編み機にかけてもらって編みました。https://t.co/aOiSxY0AVm pic.twitter.com/ab2Y0KGSG4
— わざわざ問う人 平田はる香 (@wazawazapan) May 5, 2021
初期の頃はわざわざザンシンバッグを編む際に4つの糸巻きを用意すればよかったのですが、4つで済むだけの糸の量が巻かれている糸巻きから利用してきたため、だんだん量が確保できなくなってきました。そのため現在は6つの糸巻きを準備し、編み機に糸を6本かける方法に変更しています。
6本の糸でバッグを編み上げるとなると、どうしても配色の難易度が上がります。とはいえ今回ご質問をいただいたのはいい機会でしたので、次回の配色決めの際に単色タイプでの製造ができないか模索してみることにします。
※残糸にまつわるお話は、別の記事で詳しくご紹介しています。ぜひ合わせてご覧ください。
読み物「残糸ソックスはなぜ2足1,000円なのか?」
パン屋のTシャツは合わなかった
園芸の作業で日々ハードに働く両筑さん。同じくハードワークのパン屋が作った「パン屋のTシャツ」はまさにピッタリなのでは、と思い使用感を伺ってみましたが、どうもそうではなかったようです。
その理由は「ずっと暑い環境での作業」にありました。両筑さんは温室での肉体労働も多く大汗をかいていて、1日に2度も3度も着替えをするほどだといいます。ところがパン屋のTシャツは堅牢さを追求すべく「度詰め」という密度を詰めて編んだ生地を採用しているため、空気をほとんど通しません。汗だくになると蒸れてしまったり、汗を吸って生地が重くなり肌当たりが気になったりするのは、今の仕様では致し方のない部分でした。
ひとつの解決策として「ウールのインナーを中に着る」方法があります。ウール素材は吸湿性が高いので天然のエアコンともいわれており、冬は暖かく夏は涼しい着用感を得られます。そのため汗が蒸れないようになるのです。とはいえ、湿度も温度も高い温室での作業にはふさわしくないかもしれません。
もうひとつのご提案としては「パン屋のTシャツではなく、リネンのTシャツを着る」策です。わざわざでは夏向けのTシャツとして、リネン素材を鹿の子編みという手法で編み上げた「リネンのTシャツ」もオリジナルで作っています。
生地に凹凸があるために汗をかいてもTシャツが肌にまとわりつかずサラッとした着心地になる点が、両筑さんの働く環境に合いそうだと考えました。
懸念としては、リネンのTシャツは五分袖なので冬場はさすがに厳しいのではないかということ、一般的に敏感肌の方はリネン素材の肌当たりが気になる場合があること、そしてパン屋のTシャツよりも値段が高くなることをお伝えしました。
着こなしで解決できるのか、仕様変更が必要なのか、それとも製品と使用環境のミスマッチなのか。「パン屋のTシャツを着たことはありますか?」というわざわざからの質問に対して両筑さんが率直に着心地の感想を伝えてくださったのは大変ありがたく、様々な角度からお話することができました。
<サンプル、お貸しします>
今回「いろいろ試してみたい」というご要望を受け、すでに卸販売のお取引をしている各社様を対象に、サンプル品の貸出をスタートさせることにしました。両筑さんには早速リクエストをお伺いし、試したいアイテムをお送りしたところです。卸先の皆様にぜひご活用いただけましたら幸いです。詳しくはお問い合わせください。
自ら使うし、販売もする
卸先さんと話して見えたこと
今回の卸相談会は、マンツーマンでのお話となったこと、また両筑さんがわざわざオリジナル製品を使い込んでくださっているユーザーさんでもあったことから、使い勝手の話から商品改良に至るまで深い話で盛り上がりました。
卸先の皆様は、わざわざにとってお客様でもあり、共に商品を販売する売り手でもあり、ユーザーとして商品を活用する使い手でもあります。
わざわざの実店舗にいらっしゃる一般のお客様や、商品の仕入先であるメーカーさんとお話するのとはまた違った目線での話となったことは、「相談会」という枠組みを超え、わざわざにとって大切な学びがあったように感じられました。
「パンと日用品、本当によいと思うものだけを。」
これはわざわざが商品を取り扱うにあたって大切にしていることです。自分たちで実際に使ってみて、よいと思ったものだけをラインナップするようにしています。両筑さんもまた、同じ考え方の持ち主でいらっしゃいました。
今回、お互いに大事に思う部分を共有しながら、売り手であり、使い手でもある視点で商品について話ができたのはとても貴重でありがたいことでした。
今後も定期的に卸相談会を開催していきます。今回のようにマンツーマンでのお話もいいですし、複数の方にご参加いただいて沢山の質問にお答えしていくスタイルもよさそうです。ご参加いただいた方に知りたい情報をお届けでき、聞いてみて良かったなと思っていただけるような場になるよう、これからも取り組んでまいります。
<卸販売について>
わざわざでは、わざわざオリジナル商品を全国の店舗をお持ちのお客様に卸販売しております。詳細は、卸専用ストアのお問い合わせフォームよりお問い合わせくださいませ。
座談会#6に続く
監修>平田はる香 文責>いしはら 写真>若菜紘之