パンと日用品の店 わざわざ

なぜ今、エネルギーを学ぶ必要があるのか

2021.08.24

わざわざでは現在、B Corp認証取得を目指し準備を始めています。「B Corpってなんのこと?」でお伝えしたように、このB Corp認証取得に向けた第一歩として、自社で使用する電力の供給源を見直し、100%自然エネルギーへの切り替えを検討してきました。

この「自然エネルギーへの切り替え」にあたり、なぜ今エネルギーの切り替えが必要なのかを改めて考え、その経緯をまとめました。エネルギーに関して詳しく説明されている記事は山ほどありますが、わざわざという一企業からの視点で、ご覧いただいている皆さんへの学びの共有となれば幸いです。

わざわざと「エネルギー」:
わざわざが初めてエネルギーを意識したのは2011年、東日本大震災のときでした。原発事故とその後の騒動を受け「パンの焼き方を変えたい」と思ったのです。

パンを焼くという人の役に立てる仕事を、災害時にも継続できるように備えたい。単一のエネルギーに頼るのではなく、薪窯を新たに作り、ガスオーブンと合わせて二つのエネルギーを併用し始めました。

「どちらか一つに決めきらない」という現在も続くわざわざの考え方は、この震災・原発事故をきっかけに言語化できたものでした。

環境問題とエネルギー

現在、日本において電気の供給について議論がなされるようになった背景として、東日本大震災の経験が大きかったかもしれません。それまで日本では萌芽であったエネルギーのあり方の議論が活発になるきっかけとなりました。

元々、原子力発電は第二次世界大戦中に原爆のテクノロジーとして確立され、1951年にアメリカで世界初の原子力発電に成功し、その後、段々と世界中に広まっていきました。日本では66年の東海原発を皮切りに、70年の大阪万博で新しいエネルギーとして注目を受けました。

その後、石油資源に頼るリスクを軽減するために原発は世界各国で盛んに取り入れられましたが、80年代のチェルノブイリの事故などにより、脱原発を表明する国が現れました。現在は、地球温暖化が進んだことにより脱炭素であるクリーンエネルギーだという見方もされ、原発問題は以前様々な議論を呼んでいます。

「自然エネルギー100%プラットフォーム事務局」のサイトでは、エネルギー問題の変遷、自然エネルギーを選択する必要性について、以下のように述べられています。

次に、エネルギーの今を知るべく、温室効果ガス排出量(2016年)を見てみます。「温室効果ガス」とは二酸化炭素だけでなく、メタンなど地球の温度を上げる全てのガスを指す名称。主に石炭などの化石燃料を燃焼させると発生します。

排出量のシェアとしては日本は上位に入っており、エネルギーを化石燃料による発電に頼っていることがうかがえます。

自然エネルギーとは?

こうしたエネルギーに関する資料をいくつか見比べてみると、それぞれ似て非なる名称が使われていることがあります。「自然エネルギー」「再生可能エネルギー」「クリーンエネルギー」。どれも同じような印象を受ける名称ですが、それぞれの定義が異なっており、受け取る側としては判断が難しいのが現状です。

例えば、国(経産省)の資料で「クリーンエネルギーによる脱炭素化を目指す」という言い方がされているのに対し、自然エネルギーの発展を願うグループは「クリーンエネルギーではなく自然エネルギーで脱原子力を」と言っている、といった例が見られます。

どちらが正しいか、ではなく、各団体がどのような考えを持っているかを知るためにも、まずこの言葉の違いを把握する必要があります。

この3つの中だとクリーンエネルギーは、脱炭素を主軸として定義しており、原子力もクリーンであるとし、包括する範囲が広くなっています。

世界の電力はどう作られている?

自然エネルギー財団の資料によれば、石炭による発電電力量は2010年代に入ってほぼ横ばいなのに対し、自然エネルギーの量は急速に伸びており(同時にガスによる発電電力量も伸びているのですが)、2019年の世界における電源の内訳は、石炭が36.4%/自然エネルギーが26%/ガスが23.3%となっています。

自然エネルギーによる発電電力量は世界的に伸びていますが、国別の電源構成を見ると、日本においては石炭・石油・ガスがほとんどを占めており、脱炭素するには多くの課題が感じられます。ただしこれは日本だけの話ではなく、アジア太平洋地域の国に同じ傾向が見られます。また、デンマークは殆どのエネルギーが自然エネルギーで賄われており、世界各国が課題としている問題をすでにクリアしている状況です。

経産省の資料では、日本のエネルギー自給率が11.8%(2018年)と低く、多くを輸入に頼っていることが課題であり、だからこそクリーンエネルギーへ切り替えていきたいと触れられていました。

自然エネルギーで賄うという指針が潮流に

「温室効果ガスを削減し、エネルギーを見直す」という、世界的な動きの経緯をまとめました。世界で初めて結ばれた国際協定が1997年の京都議定書です。これは温室効果ガス排出量の削減を法的義務とする取り決めでした。

京都議定書は先進国にのみ義務付けるものだったため、このとき対象外となっていた途上国にも温室効果ガスを削減するよう努力を求めるパリ協定が2015年に採択されます。このパリ協定は法的義務ではなく、温室効果ガスの削減目標を国ごとに決めていました。

ここまでの論点は「温室効果ガスの削減」でしたが、2018年までに65か国が「100%自然エネルギーの達成」を目標に掲げるようになります。ただし、この目標を掲げた国のほとんどが途上国。先進国はすでに原子力発電所を持っている等の事情があることから、100%自然エネルギー達成を目標に掲げづらかったのかもしれません。

「100%自然エネルギーの達成」を目標に掲げない国に代わって、2019年には世界250以上の都市がその目標を掲げる流れに。さらに近年、100%自然エネルギーの達成を目標とする企業が加盟する「RE100」に、数多くの有名企業が賛同し始めています。

このように以前は国レベルでのエネルギー選択だったのが、環境問題の自己認識の向上から国から都市へ、都市から企業へ、そして個人個人の選択へというように裾野が広がってきています。環境問題から始まったエネルギー問題への関心ではありましたが、個人が選択を自由にできるようになったことは、大きな進展と捉えてよいでしょう。

カーボンニュートラルって何?

100%自然エネルギーを達成するという目標は、国から都市へ、都市から企業が掲げる目標へと移り変わってきました。日本においても、100%自然エネルギー達成という目標を掲げた県や市、企業が現れています。

一方で、2020年に日本が国として掲げた目標は「2030年までに自然エネルギーを22〜24%に」「2050年までに温室効果ガスの排出をゼロに」です。

カーボンニュートラルとは、植物や植物由来の燃料を燃焼してCO2が発生しても、その植物は成長過程でCO2を吸収しており、ライフサイクル全体(始めから終わりまで)でみると大気中のCO2を増加させず、CO2排出量の収支は実質ゼロになるという考え方です。

排出量を0にすることは実質的に難しいので、温室効果ガスの排出量は削減努力はしつつも、やむを得ず排出してしまう温室効果ガスについては、吸収・除去を行い、実質的に0を目指すことになります。合理的でとてもわかりやすい指針で、多くの国が取り入れた指針を掲げています。

長野県は?

では、わざわざの所在地である長野県はどのように取り組みを説明しているでしょうか。

県としては「再生可能エネルギーの供給拡大」の具現化を図るとしています。また県内の事業者へ向けても、エネルギーに関して知識を深めたり、取り組みを行うことが求められています。

先に述べたように「100%自然エネルギーの達成」という目標は、国から都市、そして企業の目標へと移り変わっています。今後もこの潮流が続くとすれば、都市・大企業よりも小さな団体や、個人すらも、100%自然エネルギーの達成を目標に掲げるようになってもおかしくはありません。ひとりひとりがエネルギーを学び、取り組み始めるべき時なのかもしれません。

中・小規模の企業が多く認証を取得しているB Corpのような制度も、この動きのひとつと考えることができるかもしれません。

100%自然エネルギー達成に向けて

わざわざでは電力会社「GREENa」の電力プランを利用し、この7月中に100%自然エネルギーへの切り替えを行うことを決定しました。

【7月5日より】わざわざ倉庫(出荷倉庫側)の電力を、
太陽光発電(南信州おひさま発電所)へ切り替え。
【7月21日より】わざわざ店舗および倉庫(事務所側)の電力を、
バイオマス発電(兵庫パルプ工業谷川工場発電所)へ切り替え。

決定の経緯など、今後もこの取り組みについて発信していきます。ぜひお付き合いいただければ幸いです。