2022年1月26日、中川政七商店さんが運営する、「スモールビジネスでまちを元気にする」取り組みである、N.PARK PROJECTにわざわざが参画し、N.PARK PROJECT NAGANOが始動。2月にはSMALL BUSINESS LABOセミナー#04を中川政七商店さんと共同開催で実施しました。
中川政七商店さんとのN.PARK PROJECT NAGANOに関するプレスリリースはこちら:
https://waza2.co.jp/news/773/
SMALL BUSINESS LABOセミナー#04のイベントレポートはこちら:
https://waza2.co.jp/news/994/
3月26日、問tou特設会場で、N.PARK PROJECT NAGANO始動後、初の独自企画である、起業家候補同士の交流イベント「ミートアップ」を開催。”長野で創業した経営者と話す「スタートアップ地方編」”をテーマに、Iターンで長野に移住し起業された2名をゲストに迎え、トークセッションを実施。ゲストは、デザイン性と機能性を兼ね備えた松本市の人気アウトドアブランド「ゼインアーツ」の小杉敬さんと、佐久穂町でスパイスの魅力が詰まったカレーを手がける「カレー屋ヒゲめがね」の豊田陽介さん。トークセッションはお二人のユニークな自己紹介から始まりました。
ゼインアーツ・小杉敬さん
小杉さんは、学生の頃から30年間、趣味も仕事もアウトドアに没頭され、クライミング・バックカントリースキー・マウンテンバイク・キャンプと様々なアウトドアに親しんでこられました。そのため長野県松本市をよく訪れており、新潟県生まれ新潟県育ちですが、2018年8月に起業するために松本市に移住し、ゼインアーツを創業されました。
小杉さんは新卒でアウトドアメーカーに入社。テントから食器に至るまで、年間100アイテムを1人でアイデア出し・企画までこなし、最初の受注の平均額が6億円規模の新製品を毎年世に送り出していました。実績が認められ、上場企業の取締役というハイプレッシャーで過酷な環境の中、キャンプ市場を牽引してこられました。そのような華々しい経歴をお持ちの小杉さんが、退職して起業するとなったとき、周囲の人々から上場企業の取締役という立場を捨てて、なぜ起業するのか、と不思議がられたそうです。
小杉さんはその理由について、現在のキャンプ市場は大企業の寡占状態で商品の価格が高くなっていることを指摘され、アウトドア愛好家が高いものを買わされており、独占企業のための市場になってしまっており、誰かが歯止めをかけなければならないと強く思うようになり、「俺がやるんだ!」という気持ちでゼインアーツを創業されました。小杉さんは高品質で適正価格の商品を世に送り出し、愛好家のための市場をつくるために奮闘されています。
ヒゲめがね・豊田陽介さん
豊田さんは神奈川県生まれ・千葉県育ちで、3児の父親です。2003年新卒でハウス食品株式会社に入社して、営業企画推進部の時にハウス食品の社内資格である「スパイスマスター」を取得し、その後新領域開発部、ダイバーシティ推進部とキャリアを積んでこられました。第三子が生まれ、社内で男性初となる育休を取得した際、長野県佐久穂町で1か月の短期移住を体験。佐久穂町の大日向小学校に出会い、ご縁を感じ東京と佐久平の二拠点生活を経て、本格的に佐久穂町に移住し、「カレー屋ヒゲめがね」を開業されました。
豊田さんは、子どものころからハウス食品に入社し、そこでの経験をもとにどうして佐久穂に移住して起業するに至ったかということについて、ご自身の大切にしたい思いを中心にお話いただきました。
佐久穂町は人口10,000人の高齢化が進む地方の町ですが、大日向小学校という私立小学校に子どもを通わせたい親世代の移住が増えています。豊田さんは、自分自身がありたい姿をぶらさないで人に喜んでもらえる生き方の事例として、自分自身の体験を積極的に発信することで「恩送り」のループを作り、カレー屋ヒゲめがねのファンを増やし、家族との時間を大切にするため週3は休んで週4ランチ営業をするという運営をされています。
3つのテーマでトークセッション
小杉さん、豊田さんの個性が光るユニークな自己紹介の後、「マインド」・「お金」・「計画」の3つのテーマに沿って、藤原印刷の藤原さんと、わざわざの平田がファシリテーターとなり、トークセッションをしました。1つ目の「マインド」は、小杉さん、豊田さんのお二人とも組織に属して構築した華々しいキャリアを手放して起業されており、どのような経緯で、マインドを育てていったのかというテーマです。2つ目の「お金」は、どのような事業計画で資金のことを考えていたのか、自己資金や借入についてもお伺いしました。3つ目の「計画」については、起業後、自身がたてた計画に対して思った通りにいかなかったことや、計画をたてたときに見えていたこと、見えていなかったことをテーマとして、お話しました。
起業に至るまでのマインドセット
小杉さんは新卒から入社した会社で、紆余曲折ありながらずっと同じ会社で経験を積まれました。最終的に取締役まで昇進し、スキル・知識・実績を蓄えながら約10年間かけてマインドを醸成したと語りました。豊田さんも新卒から入社したハウス食品で新規事業部に配属された時に積極的に外部で新規事業をしている人々と出会い、外の世界を知ったことが起業のマインドにつながったそうです。大企業でキャリアを積み上げてきたお二人ならではのマインドセットを伺えました。
お金のリアル
小杉さんは資金について、銀行からの融資は受けず、知り合いからお金を借りて用意しました。アウトブランドメーカーは、在庫を持たずに受注生産でビジネスを始める方もいる中で、小杉さんは高品質なブランドを適正価格で市場にだすことを使命にしていたので、敢えて在庫を抱えてビジネスをする方法を確立させていきました。このあたりは、サラリーマン時代に培った知見をフル活用して、小杉さんならではの方法で確立させていきました。
豊田さんは移住先で良い物件と出会えたことが活路になりました。また週4ランチで生活と経営を安定させていく方法論も、これまでのキャリアを棚卸してフル活用してうまくやりくりすることにいきつきました。お二人ともここでも大企業でこれまで培ったキャリアを最大限活用されてお金にまつわる課題をクリアされていきました。
最初から見えていたものと見えていなかったもの
小杉さんは、創業時にたてた初年度の計画を大幅に上方修正することになりました。ブランド認知のためには3年ほど時間がかかると想定して、計画を堅めに作っていましたが、インスタグラムを契機として想像を超える引き合いがあり、採用をして急ピッチで体制づくりを進める必要が発生しました。いまでもまだお問い合わせに十分対応できていないほど、順調すぎる運営となっています。
豊田さんも開業当初、想定より倍の集客となり、仕込みに追われて忙しくなりすぎたため、イートインの日数を減らしたり、仕込みの方法を変更したり、お問い合わせ対応を改善するなど、休みが十分とれるように生産性を上げていかれました。
起業しても最初に考えていたよりもうまくいかなかったというケースが多い中で、お二人とも最初に考えていたより、良い結果となっており、その要因として、これまで長い時間をかけて積み上げてきたキャリアが大きな武器として結実していることが伺えました。このようにトークイベントでは、起業家のマインドセット、お金のリアル、計画の見通しなどを赤裸々に語っていただき、会場は大いに盛り上がりました。
気づきをシェアするワークショップ
トークセッションのあと、参加者と一緒に今日の学びから気づきをシェアするワークショップを開催しました。参加者でグループに分かれディスカッションして気づきをまとめ、グループのリーダーが気づきをを発表。参加者のみなさんにトークセッションの学びを深めていただきました。
参加者の感想
今回のイベントで自身の学びにつながった内容
・起業準備の大切さ
・起業家による考え方の違いと共通項
・今いる環境の外の人の話を聞く大切さ、想いと計画のバランス、過去の経験を活かすこと
・自分を俯瞰でみる、相対化
・利己と利他について。適正価格。
・ゼインアーツさんや豊田さんの仕事に対する熱量。鬱になるほど仕事に向き合っていた姿はいまの自分にあるのか。話は変わりますが、佐久穂町の勢いを感じましたし、大変興味が出ました。
・自分がこうしたいということと、他人から見たらどう見えるのかということのバランス感の大切さ。
・計画の重要性。講師の話の中で刺さるポイントが受講者によって、事業の段階(起業前、起業後、起業しない伴走者)によって違うこと。
・起業された方々のそれに至る背景や達成度とそのプロセス
今回のイベントで今後に生かそうと思ったこと
・事業計画の立て方等起業に関することを自分で調べてみようという気になりました。
・自分がどうしたい、に市場価値があるかという話は響いた。価値があれば仕事としてしっかり組み立てたいし、なければ趣味?ボランティア的な範囲でやればいい。計画を立てる大切さはよくわかった。
・頭の中にあるものを書き出して人に伝えられるようにしたい。
・地域おこし協力隊2年目の計画にあたり、can, need, wantのバランスづくりに難しさを感じていたけれども、利他利己のお話、自分ファーストとは、自分発信の誰かのため、というのが私の中では新しい視点で、偏りのあるwantから抜け出せそうです!
・利己と利他はいつも悩むところで、社会に貢献するということにとらわれて自分の想いとのバランスが難しい。今回は利他にとらわれず、どれがスタートでも良く、最良の選択をしていけばいいということを学びました。今後迷ったとき、きっと今回のお話を思い出し、最良の選択を探せると思います。ありがとうございました。
・起業をした人、起業された人と僅かにでもお近づきになれたことです。
・想いを言語化し、表現力を磨くこと。
・事業計画書を精度をあげて明文化する。
・活動における視点の再確認(マーケットリサーチの必要性と重要性、またサラリーマンであることが全てではないということ)
イベント全体の感想
・全体としては、オンラインを含めた聞き手に対して随時配慮していただき、知りたいことを知ることができました。ありがとうございました。
・小杉さん・豊田さんともに、起業前に大企業に所属されていて、自分自身もそうなので、共感する部分が大きかったです。今後の生き方を考えるきっかけをいただきました。ありがとうございました。
・今日はとても楽しい時間をありがとうございました。小杉さんと豊田さんの自己紹介だけでもお腹いっぱいになるくらい学びある時間でした。大企業にお勤めだった方々の人生の一部をお伺いできて、聞きたい方いっぱいいるよなぁ〜聞いたら苦しくなるサラリーマンもいるよなぁ〜なんて思いながら聞いてました(うちの夫とか)。
・とても学びが多く、有意義な時間でした。登壇者お二人だけでなく藤原さん、平田さんのお話でもなるほど〜と思える内容が多く、様々な視点から自分の相対化について考えるきっかけになりました。ありがとうございました。
・とても良い学びの時間となりました。ありがとうございました。
・楽しく勉強になりました!!参加して良かったです!!
次回イベントのお知らせ
次回のSMALL BUSINESS LABOセミナーは、藤原印刷・藤原さんがゲストのイベントを実施予定で、現在企画中です。開催時期は6月を予定しております。詳細はコーポレートサイトでお伝えしますのでお楽しみに!
文責>尾崎絵美 写真>若菜紘之